アブセンティズムとプレゼンティズム (absenteeism / presenteeism)


 プレゼンティズム(Presenteeism)という言葉が、近年、生産性向上や産業衛生の分野で話題となっています。欠席を意味するアブセンティズム(absenteeism)は、欠勤や休職、あるいは遅刻早退など、職場にいることができず、業務に就けない状態を意味し、従来はこの予防と対策がメインに行われていました。

しかし近年、職域の業績に与える影響は、アブセンティズムよりも、プレゼンティズムの方が大きいことが明らかになっています。

プレゼンティズムとは、「出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題により、充分にパフォーマンスが上がらない状態」を意味します。

たとえば、花粉の時期、花粉症の人の作業効率は少なくともおよそ5%低下することや、風邪を引いた状態で出勤することでも、作業効率がやはりおよそ5%下がることが知られています。これらの問題は一過性ながらパフォーマンスを押し下げ、会社の利益水準を引き下げます。また、身体疾患は継続的にパフォーマンスを低下させる原因となります。たとえば貧血や心臓病、癌などは、倦怠感や易疲労性、慢性的な体調不良を通じて、年間のパフォーマンスを低下させます。

マスクのサラリーマン

しかし、最も大きく、かつ深刻なプレゼンティズムは、睡眠と精神の問題、そして毎日の生活習慣から生じます

現代において、日本人の2人に1人は何らかの睡眠の問題を抱えています。不眠症は、日中のパフォーマンスを著しく悪化させ、金額にして年間25万円以上の生産性低下をもたらし、また、アクシデントやミスの発生確率を1.4倍にすることが知られています。残りの睡眠障害、たとえば極端な睡眠不足や睡眠の質の悪化も日中のパフォーマンスを低下させます。あるいは寝酒など、好ましくない生活習慣は、日中パフォーマンスの低下のみならず、将来の認知症リスクを2.5倍以上に増加させます。

スタッフの健康に対して効果的な施策を行わないことは、上記のような、将来の疾病に結びつき、そして日々のパフォーマンスも低下させる心身の問題や生活習慣が野放しになっていることを意味します。

組織に内在するリスクと損なわれている利益を把握し、それに対して適切に予防となる対策を講じ、スタッフの健康と組織のパフォーマンスを向上させましょう。