「週末の寝だめ」でパフォーマンス悪化
「週末の寝だめ」が平日のパフォーマンスを悪化させていること、ご存じでしたか?週末の寝だめ習慣、見直した方がよいかもしれません。
1月7日のコラム では、週末の寝だめが健康に悪影響を及ぼすことを説明しました。今回は、週末の寝だめの弊害についてもう少し掘り下げて、睡眠習慣をどう見直したらよいのか、紹介していきたいと思います。
平日は睡眠不足が続き、週末に寝だめをしたものの、月曜の朝から「からだがだるい」「疲れがとれていない」「調子があがらない」なんてことはありますよね。実は、この不調の原因、実は社会的時差ボケ(Social Jet Lag)にあります。社会的時差ボケ、耳慣れない言葉かもしれませんが、アメリカやヨーロッパへ旅行した時の時差ボケを思い出していただければわかりやすいかと思います。こういった海外旅行の場合は、旅行中、ぼーっとしてしまったり、倦怠感、日中のねむけ、疲労感、頭重感をおぼえたり、また帰国後も本調子に戻れなかったりしますよね。この時差ボケと同じことが、週末の寝だめによって引き起こされているのです。
もう少し専門的な話をしていきましょう。社会的時差ボケとは、時間生物学者のローネンバーグ教授が2006年に提唱した概念で、社会的な時間と生物時計の不一致によって生ずる不調をさします。 わたしたちの多くは、仕事や学校、家事などの社会的制約により、「仕事のある日」には目覚まし時計などで起床することで、睡眠不足となってしまいます。 一方、「仕事のない日」では蓄積した睡眠不足を解消するため、長時間の睡眠をとろうとします。 こうした平日と休日との睡眠のタイミングのズレにより、社会的時差ボケが生じてしまうのです。この週末に寝だめすることにより生じる社会的時差ボケが、翌週平日の眠気度と疲労度をアップさせることが研究で明らかにされています。オーストラリアFlinders大学のA.Taylor教授らが行った研究によると、平日の睡眠習慣を続けたグループと週末に寝だめをしたグループの翌週の眠気度と疲労度を比較した結果、「寝だめをしたグループの方が翌週の月曜日・火曜日の眠気度や疲労度が著しく高い」と結論づけられました。
また、社会的時差ボケがパフォーマンスを低下させるというエビデンスがあります。スペインのComplutense大学のF. Díaz-Moralesらが12-16歳の学生796人に対して行った研究によると、「社会的時差ボケが生じている学生は、学業成績(GPA)や認知機能が悪化する」ことが示されました。Juan F. Díaz-Morales, et al. The Journal of Biological and Medical Rhythm Research. Vol32,2015. Social jetlag, academic achievement and cognitive performance
このように、月曜の朝から「からだがだるい」「疲れがとれていない」「調子があがらない」のは、週末の寝だめに原因があるのかもしれません。では、月曜の朝を絶好調でむかえるためにはどうすればよいのでしょうか? 理想としては、平日も週末も同じ時間に起きて同じ時間に寝ることです。しかしながら、平日は仕事や勉強、家事で忙しくて睡眠不足だし、週末はゆっくり寝ていたい、そんな方も多いと思います。ここでポイントとなってくるのは、「社会的時差ボケ時間」になります。社会的時差ボケ時間は平日の眠りの中間時刻と休日の眠りの中間時刻の差で計算されます。具体的にみていきましょう。
以下の図1をご覧ください。
図1
平日は0時に寝て6時に起きているので、平日の眠りの中間時刻は3時になります。一方、休日2時に寝て12時に起きているので、休日の眠りの中間時刻は7時になります。よって、社会的時差ボケ時間は4時間となります。これはインドやパキスタンに旅行した時の時差になります。休日のたびにインドやパキスタンに旅行したのと同じことが起こってしまっているのです。時差は少ない方がいいですよね。上記の例でいうと、休日2時に寝て12時起きていたのを0時に寝て8時に起きるように改めれば、休日の眠りの中間時刻は7時から4時になり、社会的時差ボケ時間は1時間に短縮されます。このようにすれば、時差ボケをある程度、防止することができます。また、週末に2-3時間朝寝坊をしているならば、その睡眠時間を20-30分ずつ平日に割り振るのも有効でしょう。さらに、社会的時差ボケ時間を計算してみて、睡眠不足を早寝で補うことも考えてもよいかもしれません。
そうはいっても、通勤通学時間が長い、残業や補講があるなどの理由で、平日は慢性的な睡眠不足、その不足分を週末たっぷり補いたいという方もいらっしゃるかと思います。まずは、社会的時差ボケ時間を意識して、20分30分でも短縮することから始めてみてはいかがでしょうか。睡眠計画を見直して、月曜の朝を絶好調でむかえましょう!