保健室の先生が取り組む、学校プチフレックス


~睡眠セミナー講師の折々話~

先日、あるセミナーにて出会った、生徒の睡眠の多様性に配慮しようと取り組む養護のK先生のお話をしたいと思います。

中学高校で睡眠セミナーをする際は、養護の先生、保健体育の先生、生徒指導の先生方とお打ち合わせをすることが多く、養護の先生はどの学校でも睡眠指導の要です。

 

そのセミナーは、以下のような内容でした。

体内時計のリズムは、大まかに分けると、朝型、昼型、夜型とあります。
(こどもみらいのシステムにて診断できます。詳細はお問合せ下さい)

思春期であっても、朝型の中高生は現在の学校生活時間に合わせることにあまり苦労は必要有りません。昼型の中高生は、多少の早起き努力(保護者の努力?)で無理をして乗り切ることが多いです。夜型の中高生はというと、からだとこころに負担のない自分本来の夜型リズムで生活をすると、全日制の高校を卒業できなくなってしまいます。夜型の生徒の殆どが、自然に眠って自然に起きることをする限り、明け方まで眠り始めることができず、朝は始業開始に間に合うよう起きることができないため、遅刻や欠席になりがちです。

保護者の方が朝、夜型の生徒を無理に起こそうとすると、お子さんは『睡眠酩酊』という状態を生じ、普段は穏やかな気質の子が暴れたり、起こそうとする母親に対して「くそばばぁ!」系の暴言が出たりします。酩酊状態なので、酔っぱらいと一緒で本当に思っていることではありませんが、保護者はとても傷つきます。夜型の生物学的要因を知らないが故に、子供に対して「だらしない」「怠けている」等の言葉をかけてしまい、お互いの自己肯定感を下げる要因ともなっています。夜型の子にとっては始業開始時刻が、まだ睡眠中であることが自然なので、血圧も体温も上がっておらず、したがって朝食を食べることも困難。食べると気持ちが悪くなったり吐いてしまうことさえあります。保護者が「早寝早起き朝ごはんが万人にとって良い習慣」と信じこんでいると、お互いにかなりストレス状態になります。

学校にいけなくなってしまった子どもたちの約9割が、学校に行きたいと思っているけれど行くことができないというデータが、東京都教育委員会による「高校を中退した理由の公式調査」(平成25年)にて出ています。不登校や遅刻の原因の一つに、行きたくても起きることができないという睡眠の問題が潜んでいるのです。

この問題は世界的に認知されています。例えばカリフォルニアでは昨年、中学高校の始業時間を遅らせることが州法で定められました。これは思春期から20歳頃にかけて、人の眠りは夜型に傾くことから、思春期の子どもたちに早起きを強いることで子どもたちの能力を潰してしまわないよう、少しでも始業時刻を遅くしようという趣旨です。

 

このセミナー終了時、養護のK先生が保護者に向けて次のように総括のお話をしてくださいました。

「睡眠の問題を抱えている場合、子どもたちも悪くない、お母さんも悪くないことがほとんどです。例えば、夜型のお子さんが、朝、血圧も体温も上がらず、朝食を食べられないまま登校する際は、おにぎりをもたせてくれたら、教室で食べてOKというような配慮も行っています。悩んでいるお母さんはご相談ください」

来たー!会社フレックスならぬ、学校プチフレックス!

もともと持っている体質を社会のリズムに合わせなければならないことで苦しんでいる生徒と保護者に対する「就学上の措置」に近い柔軟なしくみ! 

 

その日のセミナーのアンケートの感想欄に以下のような記載が見受けられました。

「娘は夜型なので、養護の先生の朝おにぎりの話は本当にありがたいと思いました。娘とも朝食のことを相談し、検討したいと思います」

「夜型の子供に本当に悩んでいます。本当に悩ましいですが、学校の協力のもとにできることからやっていこうと思います。」

「子供を朝型に変えようとしていたことが、もともと持っている睡眠のタイプを変えようとしていたことだと気づきました。朝食べないことに怒鳴っていたので、養護の先生の言葉に親としてストレス軽減になりそうです。」 

 

K先生のように、スリープリテラシーを学校現場に一緒に落とし込んで行く仲間がもっと増えたらいいなと思っています。一緒に睡眠指導に取り組んでみませんか?

 

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