企業の安全配慮義務と『こころの健康』

昨今、会社および管理監督者が遵守すべき安全配慮義務、特に『こころの健康』に関する目が厳しくなってきています。

あなたの会社ではどう対応していますか?会社と部下、そして自分自身を守るために抑えておきたいポイント、『こころの健康』に関する勘所をお話していきましょう。

 

  1. 安全配慮義務とは

そもそも安全配慮義務とは何か?しっかり理解していない人も多いでしょう。根拠は、労働契約法第5条に明記されており、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とあります。ここでいう「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれるのがポイントとなってきます。また、「使用者」とは、事業主のみならず部長・課長等の管理監督者のことを指すので、一般的に部下をもつすべての人があてはまります。

従来、「労働による健康被害」というのは、「どこかから落ちる」「何かが落ちてくる」「発がん性物質に暴露しガンになる」といった、職場環境における物理的な外傷が一般的でした。しかしながら、サービス業が主流となった現代においては、過労死や過労に伴う心血管疾患、うつ病などが増加してきており、業務に関連する健康全般への配慮が求められるようになりました。

すなわち、部長・課長等の管理監督者には、部下である従業員の健康を守る義務が課されているのです。当該義務を果たしていくためには、従業員の『こころの健康』を守っていくことが重要です。

 

  1. 従業員の『こころの健康』の重要性

昨今、『こころの健康』を害して、「うつ」、そして最悪は「自殺」に至ってしまうケースが、枚挙にいとまがありません。

また、従業員の「うつ」による経営リスクが、急速に高まってきています。具体的によくあるケースとしては、「うつ」により従業員が出社困難・休退職に追い込まれ、人員補充コストや機会損失が発生します。その損失額はたった一人でも千万単位に及ぶことが通常です。さらには、会社に安全配慮義務違反等が存在する場合、損害賠償責任が発生するケースもあります。すなわち、従業員の『こころの健康』が経営リスクになるのです。

 

  1. 従業員の『こころの健康』を守り、経営リスクを低減させるには

上記において、従業員の『こころの健康』の重要性についてお話ししました。しかしながら、残念なことに従業員の「うつ」の発見は困難で、取り返しがつかなくなってから明らかになるケースがほとんどです。

・本人が気がつかない

・本人が気がついていても隠す

・周りも気がつかない

・気がついていても手を打てない

・気づいていても業務をやらせてしまう

・うつは気合で治ると思っている上司がさらに追い込む

⇓ そして…

・突然、会社に来なくなって気がつく

・突然死にたいといい始めて気がつく

・突然病院の連絡で気がつく

・突然朝刊を見て気がつく

このような事態を回避するためにも、まず、『ストレスチェック』を活用することが大切です。従業員の『こころの健康』のみならず、会社と管理職の防衛にもつながることが多いです。具体的には、『ストレスチェック』により、従業員のメンタルヘルス不調の予防、従業員自身のストレスへの気づき、ひいてはストレスの原因となる職場環境の改善が可能となります。

『ストレスチェック』のほかに、産業医・保健師面談の活用という選択肢もあります。従業員の健康面に不安な部分がある場合、産業医・保健師面談を受けてみたらどうか?と勧めてみることは、本人の健康上も、そしてリスク管理上も大きな意義を持っています。これは、会社側にとって「健康上の配慮をした」という証拠にもなります。さらに、産業医・保健師には守秘義務があり、会社には話してくれない個別の事情もしばしば教えてくれます。もしその人に何かあったときに、誰も知らなかったような個人の事情が産業医カルテには書いてあるかもしれません。実は会社の責任ではなかったなんてことが明らかになることもあります。

 

『ストレスチェック』等を活用し、従業員の『こころの健康』を守ることは、従業員の健康に資するのみならず、『企業価値の向上』につながるのです。