時差ボケ対策アルゴリズム「eSLEEP® jet lag」API提供開始


エビデンスに基づく健康経営とヘルスケアデータマイニング、そして睡眠改善プログラムを提供する株式会社こどもみらいは、個人の体内時計と行動・渡航パターンに応じた時差ボケ対策プログラムである「eSLEEP® jet lag」APIのαバージョンの提供を開始します。また、本APIのアルゴリズムが実際に早期の現地適応を促すことが、生体指標を用いて検証されました。

・時差ボケと対策の重要性について
ヒトには24~25時間の周期で動く体内時計があり、概日リズム(サーカディアン・リズム)と呼ばれます。睡眠や覚醒をはじめとして、体温、血圧、身体的パフォーマンス、胃腸の動き、認知機能なども一日の中で大きく変動し、約24時間の周期性を持っています。
時差のある地域へ移動したとき、体が覚醒・食事・運動・睡眠をしたがっている時間と、現地で実際に活動・休息したい時間とが乖離すると「時差ボケ」となります。また、現地に短期だけ滞在してすぐに帰国するという場合も、体内リズムがずれ始めた状態で帰国することになり、やはり不調を招きます。これらが顕著に心身に悪影響を与える場合には、「概日リズム睡眠・覚醒障害」の「時差障害」と診断される場合もあります。
時差ボケはせっかくの旅行や出張で存分に楽しめない、力を発揮できないのみならず、心身の不調を起こしてしまう重大な問題であり、対策が必要です。

・時差ボケ対策アルゴリズムとそのAPIについて
体内時計のうち、とくに「中枢時計」と呼ばれる全身の細胞・組織のリズムに影響を与える時計は、ヒトの場合は光によって調整されます。また、胃腸などの「末梢時計」は食事の影響も受け、全身的な体調にやはり影響を与えます。
朝方の光は体内時計を前進させ、夜の光は体内時計を後退させることは以前から知られていましたが、我々の研究チームは、おおよそどの程度の時間に光を浴びると体内時計が前に動くのか、あるいは後ろに動くのかが、個人によって異なることを明らかにしました。たとえば、同じ午前4時に浴びる光であっても、朝型の人にとっては体内時計を早める一方で、一定以上の夜型の人にとっては、体内時計を遅らせてしまいます。(下図1)

このため、本アルゴリズムおよびAPIは、その人の体内時計の個人差を把握しつつ、体内時計を早めることで現地に適応すべきか、遅らせることで適応すべきか、あるいは体内時計を動かさないほうがよいのかを判定した上で、最適なタイミングで光を利用すべきタイミングを提示し、その具体的な時刻を提示します。また、睡眠と覚醒、日中の体調に影響するその他の要因(食事タイミングやカフェインの摂取)についても助言を提供します。

図1)クロノタイプと光暴露と体内時計の変化図1)クロノタイプと光暴露と体内時計の変化

 

・本アルゴリズム利用の有用性
下記のグラフは、本アルゴリズムを渡航前日から利用した利用者の、体内時計の代表的な指標である「深部体温」の推移を表しています。通常、大幅な時差を伴う地域への渡航には、適応するためには1週間以上の時間を要するとされていますが、この利用者は日本と8時間の時差がある地域において、現地に到着した翌日には現地での望ましい活動時刻に適応できたことを示します。利用者本人からも、利用しなかった際の以前の出張に比べ、「著明に体が楽だった」という主観的な改善効果が寄せられています。

図2)深部体温変化図2)深部体温変化

・今後の「eSLEEP® jet lag」の取り組み
渡航先でのアクティビティを充実させ、さらには生産性を高めることが可能な本技術は、時差のある地域への渡航が多い丸紅従業員組合所属の組合員の皆様へ、現在トライアル提供をさせて頂いております。また、「体内時計という、自分だけの時間に回帰する」「睡眠で従業員の健康と生産性を、分析・向上させる」サービスを運営されている株式会社O:様のO:SLEEPの一部パッケージにもご利用いただいています。
本技術は今後、渡航者のみならず、過酷な勤務環境に置かれているシフトワーカーへも体調の改善効果を発揮できることが期待でき、さらなる研究開発を行ってまいります。

<株式会社こどもみらいについて>
株式会社こどもみらいは、科学的根拠 に基づいた健康経営を推進するプロフェッショナルチームです。睡眠と健康に関する研究「Sleep & Health Research」、睡眠改善プログラム「eSLEEP」、生活習慣や睡眠も含めたストレスマネジメントの要となるストレスチェック「STRESCOPE」などを提供しています。
https://cfltd.co.jp

<株式会社O:について>
「体内時計という、自分だけの時間に回帰しよう」をコンセプトに2016年12月に設立。一日24時間という決められたサイクルではなく、個々人固有の体内時計を軸にした、新しい生き方、働き方の社会実装を目指しています。今後は睡眠分野に限らず体内時計が関連する幅広い分野への積極的な事業展開を目指します。
http://o-inc.jp/

<eSLEEPについて>
eSLEEPは、株式会社こどもみらいが2012年から睡眠研究医主導のもと、医師・心理士・保健師・統計学者(データサイエンティスト)を中心として提供・開発している睡眠改善プログラムです。eSLEEP academicとeSLEEP businessでは、組織単位で睡眠と生活習慣の問題を医学的に評価・分析し、睡眠コンサルティングと個別指導による改善を通して、心身の疾患の予防と生産性の向上を図ります。2015年には教育現場における出席率の向上や退学予防効果を、2018年には職域における利益向上効果を定量的に明らかにしました。
https://esleep.jp/