「生産性向上」のために睡眠改革を


「働き方改革」が国家として大きく推進され、従業員の「生産性向上」が会社にとって重要な課題として認知されるようになりました。働き方改革の一環として、残業を削減し、有給休暇の取得しやすい環境を整え、生産性向上に向けた取り組みをしている会社も多いのではないでしょうか?

「人事労務制度を再構築し、IT投資もしたのに、、、生産性が向上していないのではないか」と、お悩みの会社も中にはあるかと思います。そのような会社は従業員の睡眠をチェックしてみてはどうでしょうか?実は、生産性向上には従業員の「睡眠」がカギになるのです。

 

「プレゼンティズム(Presenteeism)」という言葉を一度は耳にしたことはあるでしょう。プレゼンティズムとは「出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題により、充分にパフォーマンスが上がらない状態」を意味します。一方、「欠勤や休職、あるいは遅刻早退など、職場にいることができず、業務に就けない状態」を「アブセンティズム(absenteeism)」といいます。

アブセンティズムにより生産性が低下するのは容易に想像がつくと思いますが、実は、アブセンティズムよりプレゼンティズムの方が、生産性低下が大きく企業の業績に悪影響を与えているのです。これは、アメリカのある金融機関の従業員を対象に実施した研究においても明らかになっています。図1のグラフをみるとわかるように、従業員の健康関連コストとして、割合が一番大きいのはプレゼンティズムであり、アブセンティズムや直接費用である医療費・薬剤費を大幅に上回っています(図1)。

 

図1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:Dee W.Edington and Wayne N.Burton(2003)

これはアメリカだけの問題ではなく日本にも当てはまります。図2のように、従業員の健康関連コストにおいて、プレゼンティズムの方がアブセンティズムより大きいのは、日本の同様です。当該調査は、日本における3企業3429件について実施され、1人あたり年間健康関連コスト(平均値)の中で、医療費が11万円・アブセンティズム3万円だったのに対して、プレゼンティズムは56万円と78%もの割合を占めることが明らかになっています(図2)。

 

図2

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:平成29年7月厚生労働省保険局コラボヘルスガイドライン P35

 

では、プレゼンティズムによる生産性低下による損失を防止するにはどうしたらよいのでしょうか?

意外かもしれませんが、従業員の「睡眠」がカギを握っているのです。これには医学的なエビデンスがあります。

弊社(株式会社こどもみらい(本社:東京都世田谷区))のデータを元に東京医科大学精神医学分野の古市亘医師らが実施した研究によると、ストレスチェックで測定される「仕事のストレス」と「周囲のサポート」の問題は、睡眠の問題や心身のストレス反応を引き起こし、それを介して生産性を低下させていることが示されました。さらには、睡眠の問題の方が、仕事のストレスや周囲にサポートよりも、生産性に与える影響が大きいことが示されました。

 

上記の研究により、会社は、従業員のストレスケアを行うと同時に睡眠の問題を評価し解決することが、生産性低下による損失を防止することが明らかになったのです。すなわち、従業員の睡眠問題に取り組むことが、従業員にパフォーマンスを発揮させ、ひいては企業価値の増加に資するのです。また、従業員の睡眠問題に取り組むことは、当然ながら従業員の健康を守ることにもつながります。

 

それでは、会社として従業員の睡眠問題にどのように取り組めばよいのでしょうか?まずは、組織のストレスや生産性に睡眠が与えている影響を分析することがポイントとなってきます。そのうえで、最適な施策を決定し実施していく必要があります。

会社が睡眠問題に取り組んだ具体的事例としては、睡眠計測アプリを使用して従業員に対する睡眠改善のコンサルティングの実施や、一人ひとりにあった睡眠の質を高めるためのプログラムの導入などが挙げられます。また、従業員の睡眠時間を可視化し6時間以上眠った従業員に報酬を与える制度を導入したユニークな企業もあります。このように働き方改革の一環として睡眠の重要性を認識し睡眠問題に取り組んでいる会社が増えてきています。

弊社(株式会社こどもみらい(本社:東京都世田谷区))においても、睡眠専門医監修の現状分析・睡眠改善プログラム「eSLEEP」のサービスを提供しておりますので、お気軽にお問合せください。